薬剤師と人生会議。

ここ最近、(特に)緩和領域や終末期領域において、ACPとか人生会議という言葉が結構登場するようになりました。
薬剤師とは程遠いように思える言葉ですが、結構大事だったりしますよね。
自分なりに考えたことをまとめてみました。


人生会議とはなんぞや


ゼロからはじめる人生会議 |

「もしものこと」を考えたことがありますか? 心の余裕のある時に、じっくりと考える時間を持ち、 そして、あなたの考えを大切な人に伝えてみませんか?


詳しくは上記サイトに記載されています。
正式名称は「アドバンス・ケア・プランニング」といいますが、親しみのわきやすいように「人生会議」という愛称が決められたそうです。医療者の自分はACPって言っちゃうかな…。
生きている中で、病気や怪我って突然です。それは、若いからとか年を取っているからということは関係なくて、誰しも急に患うものなんですよね。(確率的には年齢が上がるほど疾患のリスクは上がりますが)
そしてもっと言うと、人生の最後、いわゆる「死」というのも、本人にしたら突然直面するものなんです。

そうした突然起こることに備えて、日頃から家族と一緒に、「自分の人生の終わりが近づくときに、こういったことを大事にしたい」ということを話し合ってみる。これが人生会議のスタートです。
実際には、家族と話し合うだけでなく、医療者とも話し合っていきます。



なぜあらかじめ話し合う必要があるのか?



上でも少し書きましたが、病気や怪我って突然なんですよね。
そうすると、場合によっては自分の意志や考えていること、望んでいることが上手く人に伝えられなくなってしまうこともしばしばあります。
例えば、末期のがん患者さんは、せん妄といって、今自分の居場所がわからなくなったり混乱して、辻褄の合わないことを言ったり暴力的な言動をしてしまうこともあります。
そして、終末期にはその発症率は80%にも上ると言われており、いよいよ最期…というときに、上手く自分の言いたいことを伝えられない可能性があります。

そうではなくとも、大きな病気をしてしまい精神的にショックを受けているときに、なかなか冷静な判断をすることは難しいことも多いですよね。
「あとで考えよう」と思うこともあるけれど、意外と時間は待ってくれないこともあります。

自分の思ったことが言えない場合、家族や医療者が「本人はきっとこう考えるだろう」と想像しながら、治療していくことになります。自分の家族が自分の価値観をよく知ってくれていると、自分が望む医療を受けやすくなりますよね。

そのために、(まだ比較的)元気なうちから、家族と自分の人生における価値観についてちょっとずつ話しておきませんか、というのが人生会議の出発点なんだと思います。


人生会議と薬剤師



人生会議は、薬剤師にとっても非常に大切なものになります。

もちろん、自分自身の価値観を知っておくということも大事です。
自分の価値観って、家族ならまぁそれなりに理解してくれているよなーと思いがちなんですが、
意外とそうでもないんですよね。
実際に話してみると、「そんなことを大切にしていたのか」と気付かされることが多いです。
「自分はそんなことを考えていたのか」と、そもそも自分の価値観を気付かされることもあるほどです。そして、「たとえ家族であっても、人生において重要視する価値観は人それぞれ」ということを知ることができます。
「もしバナゲーム」とか、やってみると意外と発見があるのでおすすめですね。


iACP

ルールに従い、10枚を選択します。なぜ、その10枚があなたにとってのトップ10なのか? その理由を家族や友人たちにどう説明するか考えてください。


薬剤師として患者さんと話すときにも、患者さんの薬や医療、健康に対する価値観を理解することは非常に大切です。
患者さんの持つ考え方と、薬剤師の持つ知識を上手く擦りあわあせて、「どうしたら納得できるような薬物療法をできるだろう」と考えやすくなります。
特に緩和ケア病棟や終末期では、どこまで積極的な治療を希望するかということは薬物療法の選択に大きく関わってきますよね。

薬剤師に関することで、患者さんや医療者の価値観が出た最たる例が、ポリファーマシーですよね。あれは決して「医師が何も確認せずにただ処方を追加している」わけではありません(基本的には)
患者さんが薬を追加されることで納得される場合もあると思いますし、その思いに答えたいという背景もあるでしょう。薬剤師も「これくらいの併用なら問題起きないかな」と思うこともあると思います。どこかのシンポジウムで聞いたのですが、「薬が処方されるということは、そこには多くの人の思いが詰まっている」ようです。こうした思いを無碍にせず、耳を傾けることで、納得の行く医療になってくのではないかなと思うんです。

お互いの価値観というものに思いを馳せながら、服薬指導をしてみたら大きな発見があるかもしれませんね。

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